ドイツのエネルギー・環境分野の最新情報をお届け
2026年第1号
目次
ごあいさつ
経済ニュース
環境ニュース
イベント報告
イベント案内
ごあいさつ
読者の皆様、
2022年2月23日、第12回日独エネルギー変革評議会の前夜、ベルリンでGJETCの評議会メンバーと集まり、ウクライナ情勢への懸念について協議していました。その夜、ロシアは実際にウクライナへの軍事侵攻を開始しました。翌朝の会議は、その出来事を受けて重苦しい雰囲気に包まれていました。その瞬間のことは、今でも鮮明に覚えています。 それから約4年後の2026年2月19日及び20日、GJETC評議会のメンバーは再びベルリンに集まり、大きく変化した地政学的状況の中で、日独のエネルギー政策に関する重要な課題について議論する予定です。 エネルギー効率政策に関するステークホルダー対話および一般公開される「評議員との懇談会」は、日独の専門家と意見交換を行う貴重な機会となっています。ドイツにお住まいの方は是非奮ってご参加頂ければ幸いです。
ヨハンナ・シリング
ECOS代表取締役
経済ニュース
2026年、ドイツ経済の見通し
回復への期待が語られる一方で、2026年のドイツ経済は依然として厳しい現実に直面している。産業生産の長期低迷や基幹産業での人員削減、輸出減速が重くのしかかり、成長率は1%前後にとどまる見通しだ。政府は大規模な景気刺激策を打ち出すが、構造改革が伴わなければ効果は限定的との見方も強く、ドイツ経済は転換点に立たされている。
ドイツ経済は2026年に回復するとの期待があるものの、現状は依然として厳しい。ドイツ産業連盟(BDI)は、産業生産が4年連続で減少していることから、現在の状況を「一時的な景気後退ではなく、構造的な衰退」と警告している。中小企業の間では失望感が強く、経済専門家からは「スローモーションのクラッシュ」と表現されるほど問題が長期化している。 特に、自動車、機械、化学といった基幹産業で人員削減が相次ぎ、輸出(特に米国向け)の減少や産業生産の低迷がドイツ経済の重荷となっている。企業景況感を示すifo景況指数も低下が続き、景気回復の兆しは乏しい。 こうした中、主要な経済研究機関は成長予測を下方修正し、2026年のGDP成長率は0.8~1.0%程度にとどまると見込まれている。連邦政府は総額5,000億ユーロの大型景気刺激策を打ち出し、インフラや防衛投資、減税、官僚的手続きの簡素化を進める方針だ。これにより一定の成長効果は期待されるものの、構造改革を伴わなければ「一時的な効果」に終わるとの懸念も示されている。 一方で、ドイツ経済には依然として強固な基盤があり、デジタル化や人工知能の活用が新たな成長機会を生み出す可能性がある。専門家からは、完璧を求めすぎず、試行錯誤を重ねるより実践的な経済政策への転換が必要だとの声が上がっている。 また、ドイツでは従業員の病気による欠勤が頻発しており、経済に多大な損失をもたらしている。製薬業界団体VFAの調査によると、過去4年間の病欠率は平均を大きく上回り、2022年には呼吸器系の感染症(インフルエンザ、RSV、COVID-19)を中心に急増した。2025年時点での病欠率は5.7%で、過去平均より約2ポイント高く、経済的損失は年間最大で国内総生産の1%、過去4年で最大1600億ユーロに上ると推計される。 国際的には、米国や中国を中心に世界のルールが変化する中で、ドイツと欧州は新たな戦略と長期的視点を持ち、変化する環境に柔軟に対応していくことが求められている。
ドイツ政府、成長回復へ本格始動 大規模減税と投資促進で競争力強化
ドイツ連邦政府は、経済を再び成長軌道に乗せるため、法人税の大幅引き下げを軸とする企業税制改革、投資ブースター、エネルギーコスト削減、官僚主義の徹底的な見直しを打ち出した。企業と国民の双方を支援し、国際競争力の高い持続的な成長と雇用創出を目指す方針である。
ドイツ連邦政府は、経済を再び成長軌道に乗せることを目的に、成長・雇用・繁栄に向けた重要な政策転換をすでに実行している。企業税制改革、投資促進策、エネルギーコストの引き下げ、官僚主義の削減を柱とし、国際競争力の高い将来志向の経済拠点としてのドイツ再構築を目指している。 企業向けには、15年以上ぶりとなる大規模な法人税改革を実施し、2028年以降、法人税率を段階的に15%から10%へ引き下げる。これにより2032年には企業の総税負担が約25%まで低下する。また、2026年から外食産業の付加価値税率を7%に引き下げ、農業分野では農業用軽油還付制度を完全復活させる。 投資促進策としては、2027年末まで設備投資に対して最大30%の加速度償却を認める「投資ブースター」を導入し、電気自動車や研究開発への投資支援も強化した。さらに、「Made for Germany」構想のもと、民間企業が今後3年間で7000億ユーロ超を投資する見通しであり、外国投資家対応のため首相直属の担当官も設置される。 エネルギー分野では、2026年からガス貯蔵賦課金の廃止、電力税の最低水準維持、送電網整備費用の国庫負担拡大などにより、企業と家計を合わせて年間約100億ユーロの負担軽減を行う。加えて、電力価格補償制度の恒久化や、エネルギー多消費産業向けの産業用電力価格制度も計画されている。 官僚主義の削減と行政改革も重視され、デジタルインフラ整備の加速、住宅建設の迅速化、公共調達手続きの簡素化、農業分野の規制廃止などが進められている。さらに、連邦・州が連携する近代化アジェンダや、デジタル化と行政改革を専管する新省庁の設置により、経済成長を後押しする体制を整えている。
(出典:2026年1月26日、ロイター通信)
ドイツ、2025年に外国直接投資が倍増 純流入は2003年以来の水準
長年続いた資本流出を脱し、2025年のドイツは外国企業からの直接投資が大幅に回復した。対独投資は前年の約2倍の960億ユーロに達し、ドイツ企業の海外投資を上回る純流入となった。法的安定性や政策の予測可能性が、国際的不確実性の中でドイツを投資先として魅力的にしていることが背景にある。
ドイツ経済研究所(IW)の推計によると、2025年は外国企業による対独直接投資が約960億ユーロに達し、前年の430億ユーロから2倍以上に増加した。一方、ドイツ企業の海外直接投資は約860億ユーロで、差し引き約100億ユーロの純流入となった。特別な事情があったコロナ初年を除けば、ドイツが純流入に転じるのは2003年以来ほぼ初めてである。2000年から2024年までの平均では、むしろ毎年約250億ユーロの資本が海外へ流出していた。
ドイツ企業の対外投資がやや低水準にとどまった背景には、国内経済の弱さもあるとみられる。2000年以降の平均は約950億ユーロであり、2025年はそれを下回っている。 IWの専門家は、この変化を前向きな兆候と評価している。不確実性が高まる国際情勢の中で、法的安定性や政策の予測可能性が投資先としてのドイツの魅力を高めているという見方である。特に、米国のトランプ大統領による不規則な通商・外交姿勢が企業に不安を与える中、ドイツの制度的安定性が相対的な強みになっていると指摘されている。また、ドイツは研究開発拠点としての魅力も依然高いとされる。
(出典:2026年1月25日、ドイツ経済研究所)
EU、2035年「エンジン車新車販売禁止方針」撤回、その影響は
EUが掲げてきた「2035年以降の事実上のガソリン車・ディーゼル車禁止」が、大きく見直される可能性が浮上した。欧州委員会はCO₂排出削減目標を緩和し、条件付きで内燃機関車の新車販売を認める制度変更を提案しており、実現すれば近年のEU気候政策における重大な方針転換となる。
EUで決まっていた「2035年以降の事実上のガソリン車・ディーゼル車禁止」が、大きく見直される可能性が出ている。欧州委員会は、これまで掲げていた厳格なCO₂削減目標を緩和し、条件付きで内燃機関車の新車販売を認める制度変更を提案した。 従来の制度では、2035年以降にEU域内で販売される新車は、走行時のCO₂排出量を実質100%削減することが求められていた。これは事実上、電気自動車などのゼロエミッション車への全面移行を意味していた。しかし新たな提案では、削減目標が「2021年比で最大90%削減」に引き下げられる。不足する分については、環境負荷の低い鋼材の使用や、より気候に配慮した燃料の活用などによって排出を相殺できる仕組みが想定されている。 この変更が認められれば、2035年以降も一定条件のもとで内燃機関を搭載した新車の販売が可能になる。しかも例外は一部の特殊車両に限られず、自動車メーカーが将来市場に投入する車全般が対象になり得るとされている。実現すれば、ここ数年のEU気候政策の中でも最大級の方針転換となる。
背景には、電気自動車の販売が想定ほど伸びていない現状がある。自動車業界からは規制の見直しを求める声が強まっており、とりわけドイツやイタリアといった自動車産業の比重が大きい国々が柔軟な対応を求めてきた。 燃料面では、バイオ燃料や合成燃料(Eフューエル)の活用がより重視されている。既に一部の国で販売されているバイオ燃料混合ガソリン「E10」のように、今後はバイオ燃料の混合比率を高めることで、既存の車両を含めたCO₂排出削減を進めていく方針だ。ただし、Eフューエルのみを使用する車両に特別な優遇枠を設ける方針は示されていない。 あわせて欧州委員会は、企業の社用車・営業車の電動化も加速させたい考え。従業員250人超かつ売上高5,000万ユーロ超の企業を対象に、保有車両のうち環境性能の高い車の割合について各国ごとの目標を設定する方針だ。社用車は一般的に使用期間が短く、中古車市場に早く流れるため、結果的に一般消費者が電動車にアクセスしやすくなる効果が期待されている。 今回の提案はまだ確定ではなく、今後、EU加盟国と欧州議会が審議し、修正や承認を行うことになる。最終的な結論が出る時期は未定である。
(出典:2025年12月17日、Wirtschaftswoche)
環境ニュース
蘭独を結ぶ初の国境越え水素輸送インフラ構築へ
オランダのGasunieとドイツのThyssengasは、両国を結ぶ初の国境越え水素輸送インフラ構築に向け、共同開発契約を締結したのである。 既存ガスパイプラインを転用し、ルール地方やラインラント地域の産業脱炭素化と北西ヨーロッパの統合的水素市場形成を目指す戦略的プロジェクトである。
Gasunie(オランダ)とThyssengas(ドイツ)は、オランダとドイツを結ぶ初の国境越え水素輸送インフラの構築に向けた共同開発契約(JDA)を2025年12月17日に締結した。両社は、既存の天然ガスパイプラインを水素輸送用に転用することで、効率的にインフラを整備する。 このパイプラインは、オランダのOude StatenzijlおよびVlieghuisを国境拠点とし、オランダの産業地域や港湾、貯蔵・生産施設と、ドイツのルール地方およびラインラント地域を中心とする産業地域を結ぶ戦略的ルートとなる。これにより、両国間で初の水素輸送が実現し、初期需要家への供給が可能になる。 Thyssengasは、オランダ・Vlieghuisからドイツ・ノルトライン=ヴェストファーレン州Ochtrupまでの既存ガスパイプラインを本プロジェクトに提供しており、改修工事はすでに開始されている。このルートは、ドイツの水素コアネットワークおよび「GET H2」イニシアティブの一部でもある。 本合意は、安全で信頼性の高い国境越え水素輸送に必要な技術・運用面の基本条件を定めるもので、将来的な複数の国際水素輸送ルート構築に向けた重要な第一歩と位置付けられている。特に、ルール地方およびラインラント地域における産業の脱炭素化を強力に支援し、北西ヨーロッパにおける統合的な水素市場の形成に貢献することが期待されている。
(出典:2025年12月17日、Gasunieプレスリリース)
ドイツ、水電解設備の拡大が失速 2030年10GW目標の達成困難に
ドイツのグリーン水素製造に向けた電解設備の導入が想定より遅れている。ケルン大学エネルギー経済研究所(EWI)の分析によると、2030年までの設備容量は約8.7GWにとどまる見通しで、政府が掲げる10GW目標の達成は難しい状況だ。規制の複雑さや高コスト、需要不足などが足かせとなり、多くのプロジェクトで遅延や停滞が生じている。
ドイツにおける水素製造向け電解設備の導入は想定よりも遅れており、2030年までに政府が掲げる10GWの目標を達成できない可能性が高まっている。ケルン大学エネルギー経済研究所(EWI)の分析によれば、現在の計画をすべて合算しても設備容量は約8.7GWにとどまる見通しだ。現時点で稼働中の容量は約181MWに過ぎず、建設中または最終投資決定(FID)済みの案件を含めても、2027年末までに稼働するのは合計約1.5GWにとどまる見込みである。確かに前回調査以降、ドイツ最大となる54MW級電解装置が稼働するなど進展は見られるが、同時に約3GW分の計画案件が中止または情報不足によりデータベースから削除されるなど、後退も目立つ。 特に懸念されるのは計画の遅延だ。2026年に稼働予定とされる20件以上のプロジェクトのうち、14件(合計1GW超)はまだFIDにも達しておらず、建設開始も発表されていない。また、2025年に稼働予定だった案件のうち、期限通り実現したのは約30%にとどまっている。こうした停滞の背景には、規制の複雑さや高い投資・運営コスト、水素需要側の支払い意欲の低さがある。さらに、供給・需要・インフラを同時に整備しなければならない「鶏と卵」の問題も、プロジェクト間の調整を難しくし、導入の遅れにつながっている。これらの要因から、ドイツの電解設備拡大は政治的な期待に比べて大きく後れを取っている状況が浮き彫りとなっている。
(出典:2026年1月26日、Hzwei)
前進する独水素網 巨額投資が問う「水素経済」の現実味
ドイツで最長約400kmの水素パイプラインが稼働し、政府主導の水素ネットワーク構築が本格化した。しかし巨額投資にもかかわらず、現時点での需要はほぼゼロで、水素経済の実現可能性には疑問が残る。政策担当者は将来の脱炭素化と国際競争を見据え投資の必要性を訴える一方、価格競争力と需要創出が最大の課題となっている。
ドイツ政府が進めるエネルギー転換戦略の一環として、ガス輸送事業者Gascadeは、既存の天然ガスパイプラインを転用した全長約400kmの水素パイプラインに水素を充填し、ドイツ最長の水素輸送路線を稼働させた。バルト海沿岸のルプミンからザクセン=アンハルト州ボッバウまでを結び、ドイツの水素ネットワーク構築に向けた「先駆的プロジェクト」と位置づけられている。 しかし、この取り組みは課題も多い。インフラ整備には数億ユーロが投資されたものの、現時点では水素輸送の契約を結んだ顧客はゼロである。水素は依然として天然ガスの約3倍と高価で、鉄鋼、化学、ガラスといったエネルギー多消費産業にとって経済的に採算が合わず、需要はほぼ存在していない。
連邦ネットワーク庁は、7年以内に約9,040kmの水素パイプライン(約6割は旧ガス管)を整備し、総事業費は189億ユーロと見積もっている。水素輸送には新たなネットワーク使用料も設定され、政府はKfWを通じた補助金や、2055年までに採算が取れない場合の国による損失補填も約束している。 それでも、政策担当者や専門家は、将来の国際競争や脱炭素化を見据え、今の段階での投資は不可欠だと強調する。一方で、水素が本格的に普及するためには価格競争力の確保が最大の課題であり、需要が立ち上がらなければネットワーク整備は無意味になる。すでに一部の企業は水素関連投資を延期しており、最終的に水素経済が成功するかどうかは、産業界の採用判断にかかっている。
(出典:2025年12月19日Tagesschau)
欧州全体の水素インフラ整備状況を示すマップが公開される
欧州全体の水素インフラ整備状況を可視化した最新の「Hydrogen Infrastructure Map」が公開された。計画中プロジェクト数は概ね横ばいだが、一部では開始時期の後ろ倒しや中止が確認されている。本マップは業界団体が連携して年1回更新され、欧州の水素バリューチェーン動向を示す「生きた地図」として活用される。
欧州全体の水素インフラ整備状況を示す最新の「Hydrogen Infrastructure Map(水素インフラマップ)」が公開された。このマップは、国別・分野別に欧州の水素インフラの動向を可視化したもので、計画中プロジェクト数は概ね横ばいである一方、一部プロジェクトでは開始予定時期が後ろ倒しされていることが示されている。 本マップは、2025年10月17日までに水素プロジェクト推進主体から提出された情報を基に、ボトムアップ方式で作成されており、生産・需要を含む水素バリューチェーン全体のインフラを対象としている。
今回の更新では、2022年12月の初回公開時に掲載されたプロジェクトについても再点検が行われ、中止されたプロジェクトは削除され、一部のプロジェクトは開始時期が遅延する形で修正された。 2025年12月1日に欧州委員会が公表した改正TEN-E規則に基づく共通関心プロジェクト(PCI)/相互関心プロジェクト(PMI)の認定状況もマップに反映されている。 本マップはENTSOG、GIE、Eurogas、CEDEC、GEODE、GD4Sの業界団体が連携して年1回更新する予定で、最新状況を反映する「生きたマップ」として維持される。次回更新は2026年第4四半期で、TYNDP 2026プロセスに提出される水素プロジェクトが含まれる予定である。 なお、このマップは情報提供を目的としたもので、インフラの正確な規模や最終的な実現を保証するものではなく、プロジェクト推進者から提供された情報に基づいて作成されている。
(出典:2025年12月17日、Gas Infrastructure Map)
水素ステーションの閉鎖の波がインフラにとって何を意味するのか
ドイツ各地で公的資金を投じて整備された水素ステーションが、明確な戦略や責任の所在なく相次いで閉鎖されている。その結果、広範な供給空白が生まれ、インフラのネットワーク機能や水素利用拡大の見通しが著しく損なわれている。
2024年末から2025年末にかけて、ドイツでは一般利用可能な水素ステーションの段階的な撤去が進んでいる様子がアニメーションで示されている。4回にわたる閉鎖の波により、多くの水素ステーションが姿を消し、その中には建設から数年しか経っておらず、公的資金(EU資金を含む)で共同出資された施設も多数含まれている。 特に最後の閉鎖段階では、ハノーファー、ビーレフェルト、カッセル周辺で広範な供給空白地帯が生じ、事実上、利用可能な公共水素ステーションがほぼ存在しない状況となった。さらに、ハンブルクからギーセンまでの南北軸では、400km以上にわたり水素ステーションが一切稼働していないという深刻な供給断絶が報告されている。 この結果、主要な交通・経済回廊における水素インフラはネットワークとしての機能を喪失し、信頼性や事業計画の見通し、2030年までの移行期における水素利用拡大に重大な影響を及ぼしている。 本件について、EU補助金を受けて整備されたインフラが明確な戦略や責任の所在がないまま撤去されているとして、無秩序な水素ステーション縮小を批判する請願書が提出されている。
(出典:2025年12月22日、H2 Infrastruktur Deutschlands)
北海洋上風力の国際連携を加速、100GW連系で欧州最大のクリーンエネルギーハブへ
ドイツ主催の北海サミット2026がハンブルクで開催され、北海諸国は洋上風力発電の国境を越えた拡大とオフショア産業の強化で合意した。協力プロジェクトを通じて最大100GWの発電能力を連系し、投資の安定化とコスト削減、雇用創出を進め、欧州のエネルギー安全保障と競争力の向上を図る方針である。
ドイツ政府は2026年1月26日、ハンブルクで第3回北海サミットを開催し、北海における洋上風力発電の拡大とオフショア産業の強化について協議した。ドイツのほか、ベルギー、デンマーク、フランス、アイルランド、アイスランド、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェー、英国の計10か国に加え、欧州委員会、NATO、企業・団体・NGOの代表が参加した。 本サミットでは、ロシアによるウクライナ侵攻後のエネルギー危機を背景に進めてきた協力を一層深化させ、北海を欧州の戦略的エネルギー拠点とする方針を確認した。特に、複数国に接続する洋上風力発電所などの「協力プロジェクト」を通じ、用地の効率化、コスト削減、エネルギーシステムの強靱化を図ることで合意し、最大100GWの発電能力を国境を越えて連系する目標を掲げた。 また、北海諸国、洋上風力産業、送電系統運用者による共同投資協定を締結し、2030年以降も安定した入札計画を確保することで投資の予見性を高めるとした。産業側は2040年までに発電コストを30%削減し、2030年までに欧州で95億ユーロを投資、9万1,000人の雇用創出を目指す。 成果は首脳宣言、エネルギー相宣言、投資協定として文書化され、ドイツは2026年に北海エネルギー協力(NSEC)の共同議長国を務め、合意の実行を主導することとなった。
(出典:2026年1月26日、ドイツ経済エネルギー省、ニーダーザクセン州経済省)
H₂-ready義務化でエムスラントの重要性高まる
ドイツとEU委員会は、新設発電所に水素転換可能な「H₂-ready」仕様を義務付ける電力プラント戦略で合意した。再生可能エネルギーを補完するバックアップ電源の整備と脱炭素化を同時に進めるこの方針は、水素活用の本格化を見据えたものであり、水素の生産・供給拠点であるエムスラント地域の戦略的価値を一段と高める動きとして注目されている。
ドイツとEU委員会は、新たな電力プラント戦略で合意した。この戦略では、今後同枠組みの下で建設される発電所はすべて「H₂-ready(将来的に水素利用へ転換可能)」であることが義務付けられ、水素火力発電への明確な移行経路が示された。これは特にエムスラント地域にとって重要な意味を持ち、同地域が水素の生産・輸送・利用を担う中核拠点として、エネルギー構造上の位置付けを一段と高めるシグナルとなっている。 この戦略の背景には、再生可能エネルギーの変動性がある。風力や太陽光の発電量が低下する局面でも安定した電力供給を維持するため、ドイツには追加の制御可能な発電容量が必要とされている。
電力プラント戦略は、供給の安全性を確保しながら気候目標も同時に達成することを目的とするものであり、今後必要となる発電設備は入札制度を通じて整備される計画である。政治的な中核理念は、こうしたバックアップ電源を長期的に化石燃料へ固定せず、将来的には水素の活用によって脱炭素化していく点にある。 合意内容によれば、ドイツは2026年に合計12GWの制御可能な発電容量に関する入札を開始する予定である。そのうち10GWは長期要件付きのH₂-readyガス火力発電所として、残る2GWは技術中立型として確保される。これらの発電所は2031年までに稼働を開始する計画である。ただし、これらの設備は主にバックアップ用途として運用されるため、建設および運転は民間事業者にとって必ずしも高い収益性を見込みにくい。そのため国家補助の活用が想定されており、この点についてはEU委員会が原則承認している。
さらに、2032年から容量市場を導入することが、長期的な事業継続性を支える重要な要素と位置付けられている。この市場では発電量ではなく、発電能力を提供すること自体に対して報酬が支払われる仕組みとなる。 水素産業の立場からは、この戦略は供給安全保障に対する前向きなシグナルとして評価されている一方で、計画されている容量規模や導入までの時間軸は、当面の電力需給の不確実性に対処するには十分ではないとの指摘もある。ドイツ水素協会(DWV)は、水素が既存および新設のガス火力発電所を段階的に脱炭素化するうえで費用対効果の高い選択肢であると強調する。
しかし、単に設備をH₂-readyにするだけでは不十分であり、実際の水素利用へ移行するための明確な転換スケジュール、水素インフラの整備、そして水素燃料を選択する経済的インセンティブが不可欠であると主張している。 エムスラント地域にとって、この戦略は中長期的に新たな水素需要の創出を意味する。発電分野における水素利用は、既存の産業用途やモビリティ用途に加わる新たな市場となり得る。ただし、その現実的な市場拡大は、今後の政策による制度設計、すなわち水素への転換期限の明確化、容量メカニズムの具体化、水素インフラへの支援策などに大きく左右される。すでにドイツ有数の水素拠点と見なされているエムスラントは、今回の戦略によって北西ドイツの水素対応発電所への供給拠点としての役割を強め、リンゲンをはじめとする地域が物流およびエネルギーのハブとしてさらに重要性を増していく可能性が高いのである。
(出典:2026年1月26日、Region Emsland)
シーメンス・エナジー、米国に10億ドル投資 AI需要で電力インフラ増強
シーメンス・エナジーは、AI向けデータセンターの急増による電力需要拡大を受け、米国で送電網機器やガスタービン部品の生産拡大に10億ドルを投資すると発表した。新工場建設を含む計画により生産能力を約2割引き上げ、1500人超の雇用創出を見込む。
シーメンス・エナジーは、米国での送電網機器およびガスタービン部品の生産拡大に10億ドルを投資すると発表した。AI向けデータセンターの急増に伴う電力需要の拡大に対応するもので、米国は同社にとって最大の受注市場となっている。 計画には、ミシシッピ州に送電設備を製造する新工場を建設することが含まれ、同社にとって世界最大規模の施設となる見通しである。これは総額60億ユーロの投資計画の一環で、米国での生産拡大により大型タービンの世界生産能力は約2割増加し、1500人超の雇用創出が見込まれている。 背景には、アマゾンやマイクロソフトなど大手IT企業による巨額のデータセンター投資がある。米政府によれば、データセンターは2年以内に米国の送電容量の12%を消費する可能性があり、2024年比でほぼ3倍に増加する見通しである。
(出典:2026年2月3日、ハンデルスブラット)
イベント報告
2026年1月14日~17日 グローバル食料農業フォーラム(GFFA)
ベルリンで開催されたグローバル食料農業フォーラム(GFFA)において、今年のテーマ「水。収穫。私たちの未来。」のもと国際的な関係者が集い、活発な議論と交流が行われました。
ベルリンのCityCubeで開催されたグローバル食料農業フォーラム(GFFA)には、今年のテーマ「水。収穫。私たちの未来。」のもと、国際的な関係者が集い、ネットワーキング、会議、そして活発な議論が行われました。 弊社代表のシリングが、連邦食料農業省(BMLEH)のブースにて開催されたネットワーキング・セッション「イノベーションパートナー:日本とニュージーランド」に招かれ、日本とのイノベーション・パートナーシップの可能性について講演しました。 このセッションには他に、在東京ドイツ大使館のバスティアン・ゼンメル氏、BMLEHのベルント・シュヴァング氏、トゥーネン研究所のニーナ・グラスニック博士もパネリストとして参加しました。司会は、GFAコンサルティンググループのラルフ・ロゴフスキー氏およびクリスティーナ・シモネッティ=テヒェルト氏が務めました。
イベント案内
2026年2月19日 GJETCステークホルダー対話
「日独両国において、産業分野のエネルギー効率政策をいかに改善できるか?」をテーマに、日独エネルギー転換評議会(GJETC)においてステークホルダー対話が開催されます。
「日独両国において、産業分野のエネルギー効率政策をいかに改善できるか?」をテーマに、日独エネルギー転換評議会(GJETC)のメンバーがベルリンで開催されるステークホルダー対話にて議論します。 GJETCおよび日独エネルギーパートナーシップ事務局は、ドイツおよび日本の産業界、研究機関、行政機関の代表者を招き、以下の論点について意見交換を行います。
• ドイツと日本の産業分野におけるエネルギー効率の現状は? どのような施策が実施済み、または計画中か
• COP28で合意された「2030年までにエネルギー効率を倍増する」という目標はどのように達成できるか
• 産業部門における費用対効果の高い省エネポテンシャルをどのように最大限活用できるか
• 企業への実務的支援をどのように強化できるか
※参加はGJETC事務局との事前調整が必要です (Johanna Schilling, jschilling@ecos.eu)
2026年2月20日GJETC公開イベント
日独エネルギー転換評議会(GJETC)のメンバーが、ドイツと日本の新政権の政策戦略および現在の地政学的課題を踏まえ、エネルギー転換の最新動向について議論します。
日本の衆議院選挙直後というタイミングで、日独エネルギー転換評議会(GJETC)のメンバーが、ドイツと日本の新政権の政策戦略および現在の地政学的課題を踏まえ、エネルギー転換の最新動向について議論します。 公開アウトリーチイベントでは、日独の専門家が参加者とともに、両国のエネルギー・気候政策の最新動向について考察し、意見交換を行います。
情報・参加申込: GJETC - Meet the Council Members
2026年2月24日 EU-Japan-Centre ウェビナー「日本の太陽光発電市場」
日独エネルギー転換評議会(GJETC)のメンバーが、ドイツと日本の新政権の政策戦略および現在の地政学的課題を踏まえ、エネルギー転換の最新動向について議論します。
ECOSの技術専門家ピーター・ベック氏が、EU-Japan-Centre for Industrial Cooperation 主催のウェビナーにて、日本の太陽光発電市場について解説します。 本ウェビナーは、日本の太陽光エネルギー分野における市場機会、政策動向、パートナーシップの可能性を探りたい欧州の中小企業(SME)を対象としています。主な議題は以下のとおりです。
• 日本における太陽光発電産業および関連技術の現状
• 太陽光発電技術に関する日本の法律、規制、補助金政策
• 市場構造および需要動向
• 主要企業および流通チャネル
• 市場参入戦略への示唆
詳細情報および申込フォーム:
https://www.eu-japan.eu/eubusinessinjapan/library/event/about-japan-webinar-series-266-solar-power-industry-market-japan
2026年4月20日 日独経済フォーラム
本フォーラムは、資源効率の向上と持続可能な生産の実現という日独共通の課題に焦点を当て、産業のネットゼロ転換に向けた具体的な道筋を探る機会となります。第19回となる今回は、両国の産業界および政界の専門家が一堂に会し、製造業の将来を左右する技術革新、資源確保、そして国際協力の可能性について多角的に議論します。
資源の効率的な利用および持続可能な生産手法の導入は、日独両国がコミットしている17の持続可能な開発目標(SDGs)の重要な柱の一つです。 両国の企業は、どのようにして産業構造を「ネットゼロ」へと転換し、貴重な資源をどのように守ることができるのでしょうか。 第19回フォーラムでは、両国の産業界および政界の専門家が集い、日独の製造業の将来を形作る主要テーマについて、課題、イノベーション、そして協力の可能性を議論します。 フォーラム終了後には、参加者全員を対象としたネットワーキング・レセプションが、ソリューションラボのラウンジにて開催されます。
開催概要
日時: 2026年4月20日
時間: 15:00~17:30(中央ヨーロッパ夏時間/CEST)
会場: 「エネルギー&産業インフラ」ソリューションラボ エキスパートステージ(ホール12)
使用言語: 英語 主なテーマ
• 持続可能かつ資源効率の高い生産に向けたイノベーション
• 生産プロセスにおける材料・資源効率 • 新素材・革新的材料
• 重要原材料(CRM)サプライチェーン:課題と戦略 • 資源効率を高めるためのIoTおよびAIの活用(例:Manufacturing X)
参加登録 参加登録は2月下旬より開始予定です。
詳細はこちらをご覧ください。
第19回 日独経済フォーラム - ECOS Consult (JP)