ドイツのエネルギー・環境分野の最新情報をお届け
2025年第4号
目次
ごあいさつ
経済ニュース
環境ニュース
- EU、低炭素水素ルールの採択へ前進
- スタートアップ企業Empact、1億€の資金調達を実施
- 新エネルギー技術で家庭コスト半減、10万雇用創出の可能性
- 独暖房メーカー13社、欧州製暖房への補助金優遇を政府に提案
- 欧州エネルギー大手2社が力強い回復と成長路線を確認 — シーメンス・エナジーとE.ONが好調決算を発表
- アルトマルクで世界有数のリチウム埋蔵発見 持続可能な採掘計画に課題も
- ドイツ、再エネ拡大に蓄電池不足の壁 — 必要容量の1/10しか整備進まず
- EWE、エムデンで320MW水素電解装置の建設を開始—欧州最大級プロジェクトが始動
- 北ドイツ水素会議2025:水素経済の現状と未来を議論する中核フォーラム
- 2025年エネルギー効率賞、注目プロジェクトが一堂に
- ドイツ経済省、エネルギー研究向けに7つの新助成策を始動
イベント報告
イベント案内
ごあいさつ
地球は、その環境が受け止められる限界に近づいています。ポツダム気候影響研究所(PIK)のプラネタリー・バウンダリーズ・サイエンス・ラボが発表した最新の報告書によると、気候変動、生物圏の完全性の変化、土地利用変化などの地球システムに関わる9つの項目のうち、現在すでに7つで高リスクの領域に達しており、これは前年より1項目多い結果です。つまり、生命を支える地球の重要な仕組みの4分の3以上が、もはや安全な範囲にないということです。私たちが行動を起こせる時間は、ますます限られてきています。
ECOSは重点テーマを通じて、地域および国際的なパートナーと協力しながら、こうした地球規模の課題に取り組んでいます。なかでも、持続可能な農業と食料生産は、今後ますます重要な役割を担っていきます。
今年最後となる本ニュースレターでは、これまでの有意義なイベントや意見交換を振り返るとともに、年末年始のひとときの休息を経て、2026年に待ち受ける新たな課題と取り組みに、前向きな期待を寄せています。
皆さまが2026年を健やかに迎えられることを心よりお祈り申し上げます。
ECOS代表取締役
ヨハンナ・シリング
経済ニュース
ドイツ政府、2026年から産業用電力価格を導入へ エネルギー多消費産業を支援
ドイツ政府はエネルギー多消費産業の競争力を維持するため、2026年から国家補助による産業用電力価格制度を導入する方針を示した。鉄鋼業などの重工業支援を念頭に、企業には効率化投資を求めつつ制度設計が最終調整段階にある。
ドイツ連邦政府は、エネルギー多消費型産業を2026年から国家補助による産業用電力価格で支援する方針である。カトリーナ・ライヒ経済相(CDU)は、産業用電力価格を2026年1月1日に導入する見通しを示し、欧州委員会との協議は最終段階にあると述べた。必要な財源は2027年に遡及的に提供される予定であり、企業が50%を効率化と持続可能性向上への投資に充てることが条件となる。これらの証明プロセスは可能な限り簡素化される見込みである。
この発表は、鉄鋼業界の苦境を議論する「鉄鋼サミット」を数日後に控えて行われたものであり、ライヒ氏は産業用電力価格が鉄鋼業の競争力確保にとって重要であると強調した。さらに、2030年以降の電力価格補償制度の延長がより重要であり、欧州委員会から前向きな反応が得られているとも述べた。 産業用電力価格とは、エネルギー多消費型企業の電力価格を引き下げるための国家補助制度であり、EU委員会は一定条件の下でその導入を既に容認している。
ドイツの労働市場、構造的ゆがみが鮮明に
失業者の増加と高水準の就業者数が並存するドイツでは、製造業の雇用減少や人手不足、教育の弱体化など複数の要因が絡む構造的課題が浮き彫りとなっている。高齢化や技能不足が深刻化する中、制度改革と投資促進が急務となっている。
ドイツでは失業者が増加している一方で、就業者数は依然として過去最高水準に近いという二面性が存在する。これは、国家・公共部門や医療・介護分野での雇用増加が大きく寄与しており、一方で製造業の雇用は減少している。また、労働市場ではパートタイム労働が一般化し、就業者の約4割がパートタイムとなっている。 求人は依然として多く、100万件を超える空きポジションが存在するが、企業の多くは専門人材を確保できず、人手不足はサービス業や建設業などで特に深刻化している。人口高齢化は一因であるが、早期退職の増加などにより高齢層の就業率が大きく低下することも問題を悪化させている。
さらに、労働力不足の背景には教育システムの弱体化がある。市民手当受給者の6割が無資格であり、学校中退者の増加も顕著である。また、若年層の一部は低賃金の職業訓練よりも最低賃金のフルタイム労働を選び、結果として技能人材の不足が拡大している。移民政策も十分な成果を上げておらず、非EU出身の移民の3分の1は自身の技能に見合わない職に就いている。
こうした多様な問題から、単一の解決策で人手不足に対処することは困難である。規制の影響評価の徹底、労働参加を阻害する制度の見直し(配偶者控除やパート優遇税制など)、教育制度の改善、そして企業の投資意欲の回復が不可欠である。追加投資なくして、ドイツが悲観論・失業増加・財政悪化の悪循環を脱することは難しい状況である。
(出典:2025年10月10日ハンデルスブラット)
ドイツ、最低賃金の引上げへ
ドイツ政府は来年から最低賃金を二段階で大幅に引き上げ、ここ10年で最大の上昇幅となる見込みだ。女性や東ドイツを中心に数百万人が恩恵を受ける一方、政治介入への懸念も指摘されている。
ドイツ連邦内閣は、法定最低賃金を大幅に引き上げる方針である。引き上げ幅は合計13.9%で、導入から10年間で最も大きな上昇となる。最低賃金は二段階で引き上げられ、まず来年1月に時給13.90ユーロへ、翌年には14.60ユーロへと増額される。この措置は、労使代表が2年ごとに協議する独立した最低賃金委員会の勧告に従ったものである。
統計局によれば、来年は最大660万人が最低賃金引き上げの恩恵を受ける見込みであり、特に女性と東ドイツ地域の労働者が多く含まれる。フルタイムで最低賃金を受け取る労働者は、来年1月から月額約190ユーロの賃金増となる。 SPDは特に引き上げを強く求めており、SPD幹事長ティム・クリュッセンドルフは今回の大幅な増額が労組と社会民主党の働きかけの成果であると強調している。一方、最低賃金委員会は夏の勧告時に政治的圧力があったと批判し、委員長クリスティアーネ・シェーネフェルトは政治介入の試みは委員会の独立性と両立しないと述べている。
(出典:2025年10月29日ターゲスシャウ)
環境ニュース
EU、低炭素水素ルールの採択へ前進
EUは低炭素水素を定義する新ルールの採択に向け大きく前進し、原子力やCCSなど多様な製造方法を評価に含める方針が事実上確定した。水素産業の拡大を妨げてきた基準の硬直性が緩和され、市場形成に向けた転機となる。
欧州議会は欧州委員会が提案した「低炭素水素」に関する委任法(DA)に異議を唱えないことを決定し、同規則の採択が事実上確定した。エネルギー担当委員ダン・ヨーゲンセンは、既存プロジェクトの「グランドファーザリング(既存事業の既得権保護)」、技術中立性の維持、原子力・再エネ電力購入契約を水素生産に活用可能とする新たな算定手法の導入を保証した。 この規則は、水素を低炭素と認定するために化石燃料比で70%以上の排出削減を求め、メタン熱分解、CCS付きメタン改質、非再エネ由来電気による電解など、あらゆるプロセスのライフサイクル排出を評価する手法を定めるものである。争点となっていた原子力利用については、欧州委員会が2028年7月までに影響評価を行うが、2026年末までに原子力など低炭素電源をより適切に統合する新メソッドを準備するとした。 業界団体 Hydrogen Europe は、この決定を「気候目標と産業競争力のバランス」と評価した。 今回の承認は、これまで高コストや厳格な基準によりグリーン水素に偏重していた欧州水素産業にとって、長く待たれていた前進である。
(出典:2025年10月24日H2-VIEW)
スタートアップ企業Empact、1億€の資金調達を実施
建物の脱炭素化を支援するEmpactが約1億ユーロの資金調達を実施し、事業拡大とオーストリア市場進出を進める。気候中立をワンストップで支える同社の成長が、建物分野のCO₂削減を後押しする。
スタートアップ企業 Empact は、建物や地区の CO₂ 排出削減を目的とした個別のエネルギーコンセプトを開発し、所有者や投資家に対して気候中立的なエネルギー供給のコンサルティングを行っている。同社は暖房ネットワークや太陽光発電設備の建設・資金調達も手掛けており、「気候中立へのワンストップショップ」として活動している。
2021年創業の Empact は、ケルン、ベルリン、ミュンヘンに拠点を置き、約100名の従業員を抱える。CEO のセバスチャン・リュールによれば、同社はこのたび約1億ユーロの資金調達を実施した。主要出資者は、エネルギー効率や脱炭素化ソリューションに投資するロンドンの投資会社 SDCL である。 調達資金は、新規プロジェクトの実施やオーストリア市場への参入に充てられる予定である。Empact は、建物の CO₂ 排出削減に関する提案から実施までを包括的にサポートする。
(出典:2025年11月1日ハンデルスブラット紙)
新エネルギー技術で家庭コスト半減、10万人の雇用創出の可能性
大手企業23社の連合が、ヒートポンプやEVなど分散型技術の普及が家計のエネルギーコストを半減し、10万の雇用を創出する可能性を指摘した。政策支援の強化を求める声が高まり、エネルギー転換の加速が焦点となっている。
Bosch、Vonovia、Enpal など23社で構成される企業イニシアチブ「New Energy Alliance」は、ヒートポンプ、電気自動車、太陽光発電などの新しいエネルギー技術の導入拡大を政府に提言している。同イニシアチブは、コンサルティング会社 Roland Berger に依頼して実施した研究を根拠として提示した。
研究によれば、これらの「分散型ソリューション」は、2025年から2045年の20年間で、家庭および中小企業のエネルギーコストを半減させ、10万人の新規雇用を創出し、地域電力網の拡張コストを40%削減する可能性があるとされる。経済全体への利益は最大で 2,550 億ユーロに達すると試算される。 同イニシアチブは政府に対し、再生可能エネルギーの高い拡張ペースの維持や、暖房・自動車向けの欧州レベルでの CO₂ 価格導入など、7項目の政策要求を行っている。
(出典:2025年9月30日ハンデルスブラット)
独暖房メーカー13社、欧州製暖房への補助金優遇を政府に提案
ドイツの暖房メーカーが欧州製機器への補助金優遇を政府に要請し、アジア勢との競争で国内産業の立て直しを狙う。「保護主義」との批判もあり、グローバル供給網の中で欧州製の定義を巡る議論が広がっている。
ドイツの暖房・空調機器メーカー13社が新たなアライアンスを結成し、連邦首相フリードリヒ・メルツや経済大臣カテリーナ・ライヒらに書簡を送付した。このアライアンスには、Vaillant、Viessmann、Wolf、Stiebel Eltron、EBM Papst、Ziehl-Abegg、EWE、1Komma5 Grad、Viega、スウェーデンの Nibe グループなどが参加している。アジア企業は含まれていない。同アライアンスは書簡で、暖房設備への補助金を「欧州製造」に優先的に付与することを政府に求めた。これにより、アジアメーカーに比べて欧州内生産企業の競争力を高めたい狙いである。
一方で、アジア企業も欧州での生産・研究を進めており、パナソニックはチェコ、ダイキンはポーランド、Midea は北イタリアで生産を行っている。こうした状況から、業界内では新同盟の提案に対して懐疑的な声や批判も上がっている。VDKF(ドイツ冷暖房・空調専門業者連盟)の関係者は、特に空気-空気型ヒートポンプ市場でアジアメーカーを排除しようとする狙いがあると指摘している。
アライアンス側は自らの要求を「保護主義ではなく、合理的な判断」と説明するが、グローバルなサプライチェーンの中で「欧州製造」の定義を明確にすることは困難であるとの指摘もある。
(出典:2025年11月20日ハンデルスブラット)
欧州エネルギー大手2社が力強い回復と成長路線を確認 — シーメンス・エナジーとE.ONが決算を発表
欧州エネルギー大手のシーメンス・エナジーとE.ONが強い回復と成長を示し、中期的な投資と再建の成果が明確になりつつある。両社の安定した収益基盤は、欧州エネルギー転換を支える重要な柱として期待されている。
欧州の主要エネルギー企業であるシーメンス・エナジーとE.ONは、それぞれの最新決算で力強い回復と成長基調を示した。 シーメンス・エナジーは2023/24年度に17億ユーロの純利益を計上し、2020年の上場以来最高益を達成。特別要因に頼らない明確な黒字転換となり、受注・売上の両面で2桁成長を記録した。来年度は利益が30〜40億ユーロへ拡大する見通しで、業績の足かせだった風力子会社シーメンス・ガメサも2026年に黒字化する計画が示されている。 一方、E.ONも2025年前半決算で好調を維持し、通期予想を据え置いた。調整後EBITDAは10%増の74億ユーロ、調整後純利益は4%増の23億ユーロとなり、電力網インフラへの巨額投資(9か月で51億ユーロ)が成長を牽引している。通年でも調整後EBITDAと純利益の増加を見込んでいる。
両社ともインフラ投資や事業再建を通じて中期的な成長力の強化を目指しており、欧州エネルギー産業の安定と発展を支える存在として、今後の成長期待が高まっている。
(出典:2025年11月12日Wirtschaftswoche、14日Wirtschaftswoche)
アルトマルクで世界有数のリチウム埋蔵発見 持続可能な採掘計画に課題も
ドイツのアルトマルクで世界有数規模とされるリチウム資源が確認され、環境負荷の小さい抽出技術に注目が集まる。だが採掘の実現性や住民参加の不足など課題も指摘され、持続可能な開発の枠組みが問われている。
ドイツのザクセン=アンハルト州アルトマルクには、世界有数のリチウム埋蔵量が存在するとされ、持続可能な方法での採掘が計画されている。試掘を担当する企業Neptune Energy は、外部調査報告に基づき約4,300万トンのリチウム炭酸塩換算量が存在すると発表した。
しかし、これはあくまで「資源量」であり、経済的に採掘可能な量とは異なる。リチウムは電気自動車のバッテリーや大型蓄電池、スマートフォンなどの電子機器に不可欠な資源であり、エネルギー転換の要となる。世界的には塩水や鉱石から採掘されており、従来の方法は大量の水消費やエネルギー消費、化学物質による環境汚染を伴う。一方、アルトマルクで計画されている Neptune Energy の手法は、深層地下水からリチウムを抽出し、使用後の水を地中に戻す循環型のプロセスで、廃棄物を出さず、地熱発電との併用も可能である。
しかし、専門家はこの手法を評価しつつも、深層掘削による飲料水汚染のリスクや、埋蔵量の過大評価の可能性に注意を促す。また、プロジェクトが地元住民にもたらす利益やリスクへの関与が十分でない点を指摘し、ドイツの旧態依然とした鉱山法の改正と、住民参加の仕組みの整備が必要であると述べている。
(出典:2025年10月3日energiezukunft)
ドイツ、再エネ拡大に“蓄電池不足”の壁 — 必要容量の1/10しか整備進まず
再エネ比率85%を目指すドイツで、大型蓄電設備の整備が必要容量の1/10にとどまり、電力網の安定化が課題となっている。水素発電との併用を含む多面的なバックアップ体制構築が急務とされる。
ドイツは2030年までに発電量の85%を再生可能エネルギーで賄うことを目指しているが、その実現には大規模な電力網整備に加え、安定供給を支える信頼性の高い大容量バッテリー蓄電設備 が不可欠である。しかし、ドイツにおけるバッテリー建設は依然として遅れている。 オーストラリアでは最近、出力850MW・容量1680MWhの巨大蓄電池「Wartha Super Battery」が稼働を開始。対照的に、ドイツはこれまで主に家庭向けの小型蓄電池が中心で、電力市場や電力網を支える大規模蓄電の導入が進んでいない。
Fraunhofer研究所の試算 によると、必要となる蓄電容量は2030年に100GWh、2045年に180GWhへと増加するのに対し、現在のドイツの蓄電容量は 約19GWh に過ぎず、大幅な拡大が必要となっている。 一部の大手企業(RWE、Preussen Elektra、EnBW、各地の市営事業者)が大型蓄電プロジェクトに取り組んでおり、EnBWは旧原発フィリップスブルク跡地に 出力400MW・容量800MWh の大型蓄電池の建設を計画している。しかし、これは必要量から見れば一部にすぎない。 さらにEnBWは2030年までに500億ユーロを投資する方針を示したが、その多くは蓄電池ではなく ガス火力発電所 に充てられる計画である。再生可能エネルギーの不安定さを補うには、蓄電池だけでは不十分と判断しているためだ。 蓄電池は「高価・寿命が短い・製造がエネルギー集約的」といった批判もあるが、
専門家のは次のように反論している:
• 蓄電池は価格の大幅な下落によりむしろ導入しやすくなっている
• 接続ルールを標準化すれば、市場はもっと蓄電池を受け入れる
• システム安定化への貢献は大きい
• ただし、蓄電池だけで「数日間の無風・日照不足」を乗り切れるわけではない そのため、専門家は 水素発電所 との併用を提言。
一方、EnBWは水素対応ガス火力発電所の建設を計画し、年内に発効予定の KWSG(発電所安全法) の支援が不可欠だとしている。
(出典:2025年8月8日ターゲスシャウ)
EWE、エムデンで320MW水素電解装置の建設を開始—欧州最大級プロジェクトが始動
EWEがエムデンで320MW級の水素電解装置建設を開始し、生産・貯蔵・輸送を統合する水素バリューチェーンの確立に動き出した。2027年の稼働を目指し、水素市場の本格化に向けた重要プロジェクトとして期待される。
エネルギー企業EWEは、エムデンで320メガワット級の大規模水素電解装置の建設を開始した。この設備は「Clean Hydrogen Coastline」プロジェクトの中心となるもので、欧州でも最大級の水素プロジェクトに数えられる。深層・高層建築工事は複数の建設企業コンソーシアムに発注され、事業が本格的に動き出した。 同設備は2027年末から再生可能エネルギー由来のグリーン水素を生産し、産業向けに供給する予定であり、水素市場の立ち上げに向けた重要なステップと位置づけられている。 プロジェクトは、エムデンの電解装置に加え、ハントルフでの水素用塩洞窟貯蔵設備の転用、ウィルヘルムスハーフェン—レーア—エムデン間のパイプライン整備など、貯蔵・輸送を含む統合的なインフラ構築を含む。これらは水素コアネットワークおよび European Hydrogen Backbone への接続も想定している。 EWEは、水素市場の加速と経済性向上のため、RFNBO規制の見直し、電解装置向けの競争力ある電力価格、グリーン製品の需要創出措置など、政策的な改善を求めている。
「Clean Hydrogen Coastline」は以下の3つのサブプロジェクトで構成される:
1. エムデンの320MW電解装置—市場規模の本格的な水素製造設備。
2. ハントルフの塩洞窟貯蔵—既存の天然ガス貯蔵庫を水素貯蔵用へ転換。
3. 北西地域のガスインフラ改修—国内外の水素ネットワークへの接続を目指す。
EWEはこれにより、ドイツ北西部において「製造・貯蔵・輸送」が一体となった水素のバリューチェーンを確立することを目指している。
(出典:2025年11月28日Hzwei)
北ドイツ水素会議2025:水素経済の現状と未来を議論する中核フォーラム
北ドイツ水素会議2025がロストックで開催され、政策・産業・研究の各分野が集結し、北ドイツ水素経済の現状と課題、将来の展望について議論が行われた。本会議は、地域の主要プロジェクトの進捗とイノベーション力の維持に向けた指針を示す重要な場となった。
北ドイツ水素会議は、北ドイツ地域における水素政策・産業・研究の対話を推進する中核的プラットフォームであり、2025年は11月下旬にロストックにて開催された。クックスハーフェン(2023年)、ハンブルク(2024年)に続く開催であり、北ドイツの水素経済の現状、政策の課題、主要プロジェクトの進捗、そして同地域が今後もイノベーション拠点として維持されるための条件が議論の中心となった。 メクレンブルク=フォアポンメルン州のパトリック・ダーレマン州首相府長官による挨拶、フェリックス・マテス博士(エコ研究所)による基調講演、北ドイツ各州のエネルギー政策担当者によるパネル討論が行われた。また、地域プロジェクトの成果と知見、産業・技術力・将来展望を扱う二つのテーマパネルが実施された。さらに、フラウンホーファーIGPの水素応用センター視察、および交流促進を目的としたネットワーキングも開催された。プログラムの詳細は、以下のホームページに掲載されている。
https://www.wasserstoff-niedersachsen.de/veranstaltungen/3-norddeutsche-wasserstoffkonferenz/
(出典:2025年11月25日北ドイツ水素会議)
2025年エネルギー効率賞、注目プロジェクトが一堂に
ドイツ・エネルギー・エージェンシー(DENA)は、エネルギー転換を加速する革新的プロジェクトを表彰する「2025年エネルギー効率賞」を発表。中小企業から大手企業まで、再生可能エネルギーやAI、地域熱供給、水素利用など、多彩な取り組みが実践例として紹介された。
ドイツ・エネルギー・エージェンシー(dena)は、今年のエネルギー転換会議において、4つの部門と特別賞で構成される「2025年エネルギー効率賞」を授与した。受賞プロジェクトは、持続可能なプラスチック製造、AIによるエネルギー管理、河川水を利用した地域熱供給、水素を用いた気候中立型生産など、実践的かつ将来性のある技術革新を示している。これらは他地域や他分野にも展開可能なモデルとなっている。 応募企業は中小企業から大企業まで幅広く、再生可能エネルギーの統合、デジタル技術、包括的な転換戦略など、多様な取り組みが評価された。特別中小企業賞は視聴者投票により決定され、再生可能エネルギーと季節型蓄熱を活用した地域熱供給を行う協同組合「Solarwärme Bracht eG」が受賞した。
この表彰式は、2024年11月3~4日に開催されたエネルギー転換会議の一環として行われ、政財界、学術、社会分野から1,000人以上が参加した。会議では、エネルギー安全保障、スマートグリッド、気候中立建築、新たな市場やビジネスモデルなどが議論された。また、denaは2025年に設立25周年を迎え、これまでに1,550以上のプロジェクトを実施してきた。現在は約650人、30か国出身の専門家が在籍し、気候中立社会の実現に向けた助言、事業推進、人材育成、国際協力など幅広い活動を展開している。
(出典:2025年11月18日ドイツ連邦経済エネルギー省)
ドイツ経済省、エネルギー研究向けに7つの新助成策を始動
ドイツ連邦経済・エネルギー省は、エネルギー転換を加速するため、地熱利用や産業向け革新技術の実装を支援する7つの新たな研究助成施策を発表。実証インフラ整備や規制サンドボックスを通じて、気候に配慮した技術を市場へとつなげることを目指す。
ドイツ連邦経済・エネルギー省は、将来のエネルギー供給を見据えたエネルギー研究を強化するため、7つの新たな助成施策を開始した。これは、2025年9月に発表されたエネルギー政策再編に向けた「10項目計画」の一環であり、2025年11月に開催された第2回エネルギー研究会議で公表された。 主な柱の一つは地熱エネルギーの活用促進である。ドイツの熱供給は依然として化石燃料に大きく依存しているため、温室効果ガス削減に向けた代替手段が求められている。2030年までに約10テラワット時分の地熱ポテンシャルを活用することを目標に、地中構造に関するデータ収集や探査技術の高度化を支援する助成が行われる。
また、エネルギー・イノベーション移転イニシアチブでは、気候に配慮した革新的技術を実用段階へ移行させることを目的に、風力、太陽光、熱・冷房、柔軟な電力網向けの試験インフラ整備や、産業用大型ヒートポンプおよび蓄熱技術の導入を加速する助成が開始される。
さらに、エネルギー転換のための規制サンドボックス制度が新たに再始動する。これは、市場投入直前の技術やビジネスモデルを実運用環境で検証するもので、電力と熱分野を中心に、コスト削減、排出削減、系統安定化、供給安全性の向上を目指す。このほかにも、サイバー強靭性の強化、建物の省エネ改修、地域熱供給パイプの低コスト化といった重要課題を対象とした追加の助成プログラムが予定されている。
(出典:2025年11月18日ドイツ連邦経済エネルギー省)
イベント報告
10月7日 ウェビナー:日本の自動車分野におけるバイオ燃料市場について
日EU産業協力センターのウェビナー・シリーズ「About Japan」の一環として、自動車分野におけるバイオ燃料市場の可能性について紹介しました。
日本のエネルギー政策は、自動車産業に大きな影響を与えており、バイオ燃料はニッチながらも戦略的に重要な変革の一部として注目を集めています。本ウェビナーでは、日本におけるバイオ燃料導入に影響を与える最新の政策枠組みを解説し、市場の需要と生産能力の概要を示すとともに、イノベーションと投資を推進する主要なプレイヤーを紹介しました。また、欧州の中小企業(SME)に対する影響についても取り上げ、EUの専門知識や技術、ソリューションが日本のバイオ燃料戦略にどのように貢献できるか具体的な分野を明らかにしました。 レポートは日EU産業協力センターのウェブサイトからダウンロード頂けます。
11月13日 北海道からの代表団がAgritechnicaを訪問
北海道からの代表団がハノーヴァーで開催されたAgritechnica2025を訪問。Agrotech Valleyのブースを訪問しました。
北海道からの代表団が、ベネディクト・ライフェンラート氏の手配により、Agritechnica 2025 の Agrotech Valley Forum e. V. ブースを訪問しました。代表団は、ヘニング・ミュラー氏とロベルト・エヴァーヴァント氏の歓迎を受けました。
また、オスナブリュック大学のディーター・トラウツ名誉教授が、オスナブリュックおよび周辺地域で進められている再生型農業(リジェネラティブ・ファーミング)に関する研究活動や実証プロジェクトについて紹介しました。
12月2日 ロボット・自動化市場日独ネットワーキングイベント
ロボット工学分野における日独ネットワーキングイベントが12月2日に東京ベイ有明ワシントンホテルで開催され、約70名の方々にご来場いただきました。
ドイツ貿易投資振興機関(GTAI)は、ザクセン州経済振興公社とともに、ロボット工学分野における日独ネットワーキングイベントを12月2日に東京ベイ有明ワシントンホテルで開催し、約70名の方々にご来場いただきました。本イベントの運営を弊社にて担当させて頂きました。イベントでは、日本ロボット工業会の矢内事務局長のご講演や、ザクセン州企業のWandelbots社、Tracetronic社のプレゼンテーションが行われたほか、GTAI及びザクセン州経済振興公社よりドイツのロボット産業の市場動向・可能性について情報が提供されました。
イベントの詳細、ザクセン州のロボット産業クラスターについては、以下のウェブサイトをご参照ください。
https://www.energiewaechter.org/saxony-at-irex2025
イベント案内
2026年1月15日 国際協力に関する意見交換会:農業・食料分野 「日本、ニュージーランド、太平洋地域」
ドイツ・ベルリンで開催されるGFFAのサイドイベントとして、2026年1月15日、「日本、ニュージーランド、太平洋地域」をテーマに農業・食料分野の国際協力に関する意見交換会が行われます。
グローバル・フォーラム・フォー・フード・アンド・アグリカルチャー(GFFA)は、将来の食料安全保障に向けた解決策を議論するため、政界・学術界・産業界・市民社会が集う国際会議であり、毎年ベルリンで開催されるものです。ドイツ連邦農業・食料・郷土省(BMLEH)が主催し、国際食品・農業・園芸見本市「グリューネ・ヴォッヘ」の開幕と並行して実施され、世界的な農業政策の重要なプラットフォームとなっています。 本クラスター会合「日本、ニュージーランド、オセアニア」では、同省の対日・対ニュージーランド協力方針が紹介され、農業担当官、関連プロジェクト、企業が同地域での経験と見解を共有する予定です。また、ECOS代表取締役ヨハナ・シリングが日本におけるビジネスチャンスについてインプットを行います。本イベントは2026年1月15日15時15分より、GFFAのサイドイベントとしてシティキューブ・ベルリンのBMLEHブースにて英語で開催されます。
2026年2月24日 ウェビナー:日本の「太陽光発電産業市場」
弊社のペーター・ベックが、日本の脱炭素化目標および変化しつつあるエネルギー政策の文脈における太陽光発電産業について、包括的な概説を行います。
本ウェビナーでは、日本の太陽光発電(PV)市場、PV 技術の最新動向に加え、温室効果ガス排出削減とエネルギー安全保障の強化を目指す日本の GX 戦略において、太陽光発電が今後どのように中核的な役割を果たしていくのかについて展望します。
詳細・お申し込み:
2026年4月20日 第19回 日独経済フォーラム
持続可能で資源節約型の生産へのソリューションをテーマに4月20日に開催されます。
「Innovation meets responsibility – solutions for sustainable and resource-saving production(革新と責任が出会う ― 持続可能で資源節約型の生産へのソリューション)」をテーマに開催される第19回フォーラムでは、日独双方の産業界および政策分野の専門家が、今後の両国の産業生産の未来を形づくる主要課題、イノベーション、協力の可能性について議論します。 フォーラム終了後には、Solution Lab ラウンジにてネットワーキング・レセプションが予定されています。
詳細情報: https://www.ecos.eu/de/veranstaltungen/details/wifo2026.html